Matsudo Ebb+Flow 滞在を終えて|A Parting Present

  • LONG
  • Screening
Photo of the article

01) JAPAN (2015) from Matt Sheridan on Vimeo.

色を手にいれる/言葉から解放される

松戸のPARADISE AIRでの経験は、私の「動く絵画」の活動に思いも寄らない変化をもたらした。松戸に着いて二日目、ディレクターの森純平と作品の投影場所を考えながら松戸駅周辺を歩いた。その道中で岩瀬自治会の方々に出会い、彼ら主催のワインパーティーにて松戸で初めての映像投影をさせてもらえることになった(以前に作った作品を編集したものを見せた)。松戸での滞在が半ば過ぎたころには、もう一人のディレクターである庄子渉が企画に携わるクラブイベントMADROOMで、ビデオジョッキーとして「動く絵画」をミキシングしてライブ上映を行った。広報担当の田村かのこには、毎週木曜日のPARADISE SALONから最終発表まで、松戸の人たちと関係を築くサポートをしてもらった。

神道のことについてそれまでよく知らなかったわたしは、松戸神社での投影を控え、松戸まちづくり会議の染谷宗成と一緒に神社や墓場に赴き、さまざまなことを学んだ。神道の考える「動き」と私が絵画を通じて表現している「動き」に近いものがあると感じたので、それを神道の「神」の考え方(=自然から放出される聖なるエネルギー)と融合させた。火、灰、水、そして緑といった自然の要素を取り込み、松戸神社神楽殿の建築そのものと、そこで行われるパフォーマンスに寄り添う表現を制作した。神社は神様の家なので、神楽殿に住む神の「顔」となるようなアニメーションをそこに投影したいと考えた。今思えば、神社の外壁を三つに分けて考えたのは、神・人・聖霊の三位一体という西洋の考えに寄っていたかもしれない。しかし私の目的はただ一つ、この10週間で受け止めた松戸の人々の静かな力と謙遜の心を、シンプルに且つダイレクトに、尊敬の意を混めて作品で表現することだった。

昨夏のブラジル滞在中、現地のアーティストとVJソフトウェアの使い方を覚えたので、PARADISE AIR滞在中に3度、VJとして発表する機会を得られてとても嬉しかった。イベント「MADROOM#2」では、過去作品を用いてDJの音楽に実験的に反応していき、音楽と面白くシンクロできたときにはそれを録画した。録画した素材は東葛クリニックみらいの外壁への投影「FKA Cinema Matsudo」に使用した。一つの動画を二つのチャンネルに分け新しい色を作り出すことで、フィクションとして生と死の葛藤を映し出していた映画館から、医療の現場としてリアルな生死の問題に向き合うクリニックに姿を変えた建物の外壁に、ある種の緊張感を表現することができた。抽象的でポップな色とアニメ・漫画・コミック本から取り入れた動きは、その作品のテーマをはっきりと具現化した。投影の光が少し弱くはあったが、それにより建物にもとからあるグリッド線が強調され、医療用モニターを連想させる効果を与えていた。そこには、松戸で学んだ考え方、命は光のようにちらつき最終的にはいつか消えるというもう一つのテーマが見え隠れしていた。

私が松戸のPARADISE AIRであげた一番の成果は、応募時に企画プランを提出した作品「Matsudo Ebb + Flow」の実現だ。この作品で目指したのは、屋内のプライベートな空間に「動く絵画」を投影し、そこから松戸のポートレートを構成することで、その空間に今までと違った視点を与えることだ。滞在開始間もないころ、松戸住民の一人に「松戸オリジナルの形(アニメーションのなかで使用する素材)を作ってみてほしい」と言われて快諾したのだが、そのあと続けて「さぞかし酷い形になるんだろうなあ!」と言われた。私は、松戸の町のためにもその言葉を挑戦として受け入れた。個人宅(高橋さん宅)や、使われていない商業スペース(ダイエー)、ラジオ局(ラジオポワロ)、バー(ノグチ屋)、日本の最後の将軍の家(戸定邸)などで投影をする機会を得て、その様子を撮影した。人々を映像のなかに登場させることで、その空間の親密さは保ったまま、場の存在感を引き出すことができた。PARADISE AIRを通じ、本当に多くの素晴らしい松戸の人々と信頼関係を築く幸運に恵まれた。「Matsudo Ebb + Flow」が、松戸で私が出会った人々の持つ可能性、未来への展望、エネルギー、そして豊かな心を、少しでも表現できていることを願う。

2015.09.12

PEOPLE

マット・シェリダン

Matt Sheridan

2014.12 - 2015.02

マット・シェリダン
Top page